定期健診はなぜ必要か

2017/08/24

歯科はもちろんのこと一般医科でも国民に向けて定期健診を受けるように呼びかけています。では、なぜ定期健診が必要なのか説明します。
よく言われていることが、早期発見、早期治療によりかかってしまった病気を早く治してしまいましょうということです。
もちろん、このことが第一義であり、病気にかかっても命に係わるところまで進まないうちに治療を行って完治させることが目的です。
現在の日本では国民皆保険制度により、保険治療に認められている治療ならば、自己負担が医療費の1割から3割負担で治療が受けられます。
この制度は非常に重要で日本における平均寿命を飛躍的に伸ばした最大の要因だと私は考えます。
つまり、経済的自己負担が少なく、治療を受けられるのですからこれほどいい制度は世界中に無いと思います。

高齢者人口の医療費の増加

現在の日本では、高齢者人口が多くなり、現役で働いて保険料を負担している人口が少なくなり、かつ高齢者人口が増え、その医療費が年々増加しています。
また、現役世代の所得がなかなか増えないので、その所得に応じた保険料も増えないので、さらに日本の社会保険料や国民健康保険料が増えず財政がひっ迫しているのが現状です。
では何故、このことと定期健診と結びつくのかという事です。

以前から判っていたのですが、その国の医療費は予防に重点をおいて疾病にかかり難くすることにより低くなるのです。
つまり、国民が普段から健康に注意し定期健診を受けて、病気を早期に発見し早期に治療をすれば、治療費も高額にならず早く社会復帰でき健康に働ければ、それだけ国民全体の医療費が低く抑えられるのです。
つまり、国民にとっても国にとっても双方いい結果となるのです。このように、国と国民の関係からいうと大きなメリットがあるのです。

医学的検知からみた定期検診のメリット

次に医学的見地からのメリットを考えると、定期健診は個人個人の健康維持に非常に重要な役割があります。
先ず定期健診を受ける様になると、人は普段から健康に留意するようになります。たとえば少しでも運動しようと思いいくらかでも歩くようになり、食べるものにも気を付ける様になります。
このように、健康維持を意識していると自分の体調が少しでも悪くなればそのことに気づける様になり、早期に病院に行くようになります。
これは、早期発見、早期治療の第1歩となるのです。

次のメリットは、定期的に健診を受けることにより、自分では気づかないことでも、血液検査、レントゲン、CTなどの検査により異常が見つかることがあります。
それが癌であれば早期に治療が出来るでしょうし、癌では無いその他の病気でも早く対処することが出来、患者さんにとってあまり負担にならず治療を進めることが出来るのです。

また、糖尿病、高血圧症などの循環器疾患といった慢性疾患にかかっていると当然数か月おきに血液検査などを行い、病状を診査しそれに合わせて投薬を調整し、症状の安定、改善を行います。
悪くなっていれば担当医師はなぜ悪くなったのかを考え、患者さんに生活状況の変化、食生活の状況を問診しそこに原因が有れば直すように指導をするでしょう。
このように定期的にチェックすることが病状の安定、改善の為に非常に重要なのです。

歯科における定期検診のメリット

歯科に於ける定期健診のメリットについて述べます。もちろん早期発見、早期治療が第1義なのですが、「歯が悪くなる原因」、「歯を磨くべき理由」にも書いたのですが、虫歯も歯周病も原因は細菌感染でありその増徴因子が物理的力です。
つまり、虫歯菌や歯周病菌に感染してもその量と時間的長さと加わる力の継続的時間的長さにより、疾病として発現したりしなかったり進行が遅かったり、ごく初期であれば治ったりします。

 虫歯や歯周病は生活習慣に大きく左右されるのです。食事の時間が不規則だったり、甘いものや砂糖の多く入った飲み物を好んで飲んでいたり、歯磨きが的確になされていなかったり、仕事でストレスが多く噛締めていたりして絶えず歯に力を掛けていると当然虫歯にもなるし、歯周病にも罹りやすくなります。

そこで、定期的に歯科検診を受けているとお口の中の変化が分かりやすく、以前の結果と比べることにより悪くなっているのかいないのかが判定出来ます。
悪くなっていなければ、その原因が家での歯磨きを含めた口腔内ケアーの仕方(歯磨き等)なのか、食生活なのか、生活環境の変化なのか、その原因を患者さんと共に考えることが出来るのです。
その原因が分かればそれを改善することにより、今すぐ治療しなくても良かったり簡単な治療で済んだりします。

治し維持することが歯科治療のゴール

歯科に於ける治療のゴールは、一度お口の中をきれいに直したらその状態を出来る限り長く維持することにあります。
その為には定期健診により、少しでも磨き方が甘くなっていることや、生活環境の変化(介護、職場の移動、育児など)により噛締めや歯ぎしりによる持続的力による虫歯や歯周病へのリスクの高まりに気づくことが出来るのです。

ご自分では気付かないことが歯科医師や歯科衛生士により見つけることが出来るのです。
原因が分かったらそこを改善していくことにより悪くしない、出来れば治療せずに治していき良好な状態を保つことに主眼を置く、これが歯科に於ける定期健診の最大のメリットです。

特に重度の歯周病に罹患し、治療を受けた方は数か月毎の検診は重要です。
重度の歯周病に一度罹患した場合、その進行は体の免疫応答と相まって進行していきます。
最初は数多くの歯周病菌と噛締めなどの力により歯を支えている歯周組織(骨、歯肉等)が炎症を起こすのですが、その炎症反応は体に備わっている免疫反応ともは相まって起こるので、一度体の中に歯周病菌に対する抗体が出来てしまうと、今度は少ない量の歯周病菌に対しても免疫応答が始まるので、磨き残しにより口腔内の細菌数が増えてしまうと今度はその量が最初の時より少ない量でも歯周組織の破壊が始まります。

ここ数年、歯科に通っていない方ぜひ一度、ご自分のお口の中がどうなっているのか調べてみてはどうでしょう。
ご自分のお口の状況を把握しておくことは健康を維持するうえで非常に大事です。
お口の中の様々な菌(特に歯周病菌)が様々な病気に関連していることが最近分かってきています。病は気からではなくお口からです。