歯周病とはどのような病気なのでしょうか?

歯周病とは、歯を支えている歯周組織(歯肉、骨)が歯周病菌に感染し、やがては歯茎の中の骨が溶け出し、最終的には歯が抜け落ちてしまう「感染症」です。昔は「歯槽膿漏」とも呼ばれていましたが、現在では「歯周病」という呼び名が一般的に広まっています。

歯周病菌も虫歯菌も、もともとお口の中には存在しません。何かしらのきっかけでお口の中に歯周病菌が入り、初めて歯周病になる可能性が出てきます。歯周病はあくまでも、「感染症」であるということを知ってください。

日本人の35歳以上の約8割が歯周病だと言われるほど、この病気は蔓延しています。「サイレントディージーズ」と呼ばれるほど、そもそも自分が歯周病になっていると気付かない人がほとんどです。


気が付いたときにはすでに手遅れ寸前だった、などということも多々あります。

お口の中には細菌が非常にたくさんいますが、この細菌の固まりを「歯垢(プラーク)」と呼び、そして細菌が死んでしまった歯垢(プラーク)の固まりが「歯石」となります。この歯石は軽石のように気泡が多くあり、この中に生きている細菌がさらに住み着きます。


歯周病菌には様々な種類のものがいますが、悪性度の高い細菌は嫌気性細菌と呼ばれ、酸素を非常に嫌い、鉄分が栄養素となります。

従って、歯茎の中というのは細菌にとって絶好の環境なのです。菌(歯周病原因菌)に感染した口腔内の歯茎(歯周ポケット)では、この菌を排除する為に毛細血管から白血球を出します。歯茎から血が出るのはこの為です。

そして、口腔内の清掃(歯磨き)出来ていないと菌が増殖し、白血球だけでは排除出来ないほどの数の菌が繁殖します。繁殖した細菌は毛細血管から身体中の血管に入り込み、全身の血管を巡って、身体全体に歯周病菌が蔓延してしまうことになるのです。

昨今の研究では、心疾患、糖尿病増徴因子、誤嚥性肺炎などの原因菌として歯周病原因菌が大きく関与していることが分かってきました。
ですので、癌や内蔵疾患の手術の前には、歯周病に感染してはいないかをチェックし、口腔内を清潔にしてから手術を行うことがスタンダードになっています。

歯周病の症状

初期の症状としては、歯茎からの出血、および口臭です。定期的なチェックを受けていない限り、この時点で気付く人はほとんどいません。進行してくると、歯がグラグラする、それゆえに食べ物が詰まる、といった症状が現れ始めます。

歯周病が進行すると、歯茎から膿が出始め、歯と歯茎の溝がさらに深くなります。こうなってくるとご自身で元に戻すのはほぼ不可能です。

最終的には歯を支える骨が完全になくなってしまい、結果的に歯が抜け落ちてしまいます。

ところで、なぜ歯周病が進行すると歯がグラグラしたり食べ物が詰まったりするのでしょうか?

歯は動いていないように見えて、その位置はわずかながら移動しています。
歯を支える骨や歯肉というのは代謝を繰り返すことによって、細胞が新しく作られ、常にリモデリングされているのです。

その動きが正常な範囲内であれば、いつも同じ位置に歯があるようになっているのですが、歯周病が進行して骨がダメになり始めると、歯が傾斜したり正常な範囲から出て動き始めたりしてしまいます。
すると噛むたびに歯が動いてしまうようになるので歯がグラグラし、隙間ができやすくなって食べ物が詰まるようになってしまうのです。

「最近歯が少しグラグラする気がする」「食べ物が詰まりやすくなったかな?」と感じ始めたら要注意です。
一刻も早く、歯科医院へ検査に行かれることを強くお勧めいたします。

歯周病になる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

根本の原因は、「歯周病菌に感染すること」です。 先ほども述べましたが、歯周病はあくまでも「感染症」です。
生まれたときに歯周病菌が口の中にあるわけではなく、何かしらのきっかけによって歯周病菌が移ってきます。

さらに、細菌が存在するところに噛む力が過度に加わると骨が破壊されてしまいます。生きている限り、食べ物を噛まずに過ごすことはありません。食事のときの噛み合わせは、正常な範囲内での咬合現象です。

しかし、普段の生活の中で知らず知らずに噛み締めている時間があります。
例えば仕事に集中しているとき、スポーツに集中しているとき、寝ているとき、などです。

歯科の用語では「クレンチング」と呼ばれるこの現象、皆さんは「歯ぎしり」「食いしばり」という言葉でご存知だと思います。これは歯にとって非常に良くないと言われています。

歯の間に歯周病菌が入り込んで炎症を起こしているときに、そういった過度な力が歯にかかってしまうと、歯を支えている骨がなくなるスピードはとても速くなります。こうした歯ぎしり、食いしばりは無意識に起こってしまうものですので、意識的にやらないようにすること、マウスピースをつけること、などが対策として考えられます。

「不良補綴物を入れていること」も原因になります。補綴物とは、詰め物や被せ物のことです。補綴物の入り方が悪いと、上の歯と下の歯の咬合関係(噛み合わせ)が悪化します。

歯医者さんで詰め物や被せ物をされたときに、「高いですか?」と聞かれ調整していったのち、少し高いと感じているけれどもそのうち慣れてしまったご経験があるのではないでしょうか?

高いと感じたまま過ごしていくことは危険です。
確かに高さには慣れていきますが、それは噛み合わせを無意識にズラして変えて、違和感をなくしていっているだけに過ぎないのです。
このままの状態でいると、ずれた噛み合わせにより歯茎に余計負担がかかり、これも歯周病を進行させる要因となります。

また不良補綴物があると、普段の歯磨きのときに毛先が届きにくい場所が出来てしまいます。
しっかり磨いているつもりでも歯垢が落とせていない事に気づかず、歯周病を進行させてしまいます。

歯周病治療と一口に言っても様々な治療法があると思いますが、御院ではどのような治療がメインなのでしょうか?


歯周病治療は、初期治療と外科治療の大きく2つに分かれます。
また別にFMD法と呼ばれる治療法もあります。

1.初期治療

TBIというブラッシング指導(歯の磨き方の指導)と食生活指導、および歯科衛生士による施術を中心に行います。

ブラッシング指導に関しては、日本トップクラスの歯科衛生士がきっちりと指導させていただきます。

日本歯周病学会認定歯科衛生士による施術では、歯の周りにこびりついた「歯石」を除去いたします。
スケーリング、ルートプレーニングという手法で施術を行ってまいります。

スケーリングは歯や歯の根の周りに付着している歯石(歯周病菌の死骸が固まったもので、歯石の中に悪性度の高い歯周病菌が生息している)を取ることで、ルートプレーニングとは、歯石が付着していた根面を滑沢にすることです。
スケーリングにより歯石を除去するだけではなく、ルートプレーニングを行うことで細菌により汚染された歯の根面をきれいに滑沢にすることが歯周病初期治療の重要なポイントとなります。

当院の歯科衛生士は日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会双方の学会から認定を受けており、豊富な知識と臨床経験を持つ優秀な衛生士ですので、安心してお任せください。

併せて不良補綴物の除去もおこなっております。
噛み合わせの改善や、普段の歯磨きの正確さが向上することが期待されます。

以上のように、なるべく歯茎を切ることなく治療を行います。
初期の歯周病のおよそ8割は、これらを徹底することにより治すことが可能です。
期間は患者様の症状によりますが、およそ2~3か月は掛かると見ていただいた方が良いでしょう。

2.外科治療

初期治療に於いて、歯科衛生士が可能な限りスケーリング、ルートプレーニングを行っても炎症が取れなかったり、膿が出たり、歯茎の腫れが収まらない場合、外科処置を行います。
麻酔下で歯茎を切開し(フラップ手術)、歯の根の深いところに付着している歯石と感染組織の除去を行い、必要があれば歯を支えている歯槽骨の整形を行い、磨き易い歯茎の形態にします。
もし骨が溶けてしまっている場合は、骨再生治療も行います。これが歯周組織再生医療です。

なるべく患者様にご負担を掛けずに治療させていただきたいと考えておりますので、いきなり外科治療を行うことはありません。

熟練の歯科衛生士が可能な限り歯石を取りきり、どうしても取りきれない部分のみ、部分的に切開することがほとんどです。

3.FMD法(短期集中治療)

この治療法は、Full Mouth Disinfection法といい、1日で全ての歯周病菌に感染した歯に対して施術を行う方法です。

患者様には朝から医院にお越しいただき、休憩を挟みつつ、全ての歯に対してスケーリング・ルートプレーニングを施します。
歯周病菌を取り除くのは、短期間の方が良いと言われておりますので、とても有効な治療法です。

治療の流れとしましては、まずは歯周病菌がどのくらいお口の中にいるのか、細菌検査で明らかにします。
その次に、その歯周病菌に合わせた抗生物質を飲んでいただきます。これは全身的な歯周病菌の除菌と、術後の発熱等の全身的な炎症反応の抑制を目的としています。
そして1日掛かりの施術に移ります。痛いときには麻酔を行いますので、痛くはありません。

メリットとしては、1日で治療が終わること、および歯周病菌が他の歯に移転しないこと、が挙げられます。

一方でデメリットとしては、費用が掛かること、1日空いている日を作らなければならないこと、が挙げられます。患者様の全身的状況や歯周病の病態により適用でない場合もあります。

メンテナンスと毎日のブラッシングで歯周病の再発を予防を

当院では、数ヵ月おきに歯科衛生士によるメンテナンスにお越しいただいております。

しかし実は一番良い予防法は、毎日の歯磨きに尽きます。
お口の中は36~38度かつ唾液で常に湿っているため、細菌が最も繁殖しやすい環境だと言えます。毎日の歯磨きにより、歯垢をしっかり落とす(プラークコントロール)が一番の予防法なのです。